第3回:データ分析は経営課題の根本原因を教えてくれる ─ 数字の裏に“改善のヒント”がある

「営業が頑張っているのに売上が伸びない」
「なぜか業績が安定しない」
「数字の報告はあるけど、何が本当の問題なのかわからない」

──こうした声を、経営者や管理職の方からよく耳にします。
実は、これらの悩みの多くは“データの見方”と“使い方”で解決できる可能性があります。

今回のテーマは、「データ分析で経営課題の根本原因を見つける」こと。
単なる数字の羅列ではなく、“なぜそうなっているのか”を明らかにするアプローチを、やさしく解説します。


経営課題の「見えない原因」を浮き彫りにする

多くの企業が陥るのは、「結果データしか見ていない」という落とし穴です。
売上・利益・商談数──これらは“結果”であって、“原因”ではありません。

例えば「売上が下がった」という現象の裏には、次のような多くの要因が潜んでいます。

  • 営業担当者ごとの成約率の違い
  • エリア別・業種別の売上偏り
  • リピート率の低下
  • 見込み顧客のフォロー不足
  • 広告費の使い方とROIの不一致

これらを分析して初めて、「本当に改善すべき箇所」=ボトルネックが見えてきます。


データ分析の第一歩:記述統計と可視化

データ分析の最初のステップは、「データを整理して全体像をつかむこと」です。
この段階を記述統計(Descriptive Statistics)と呼びます。

具体的には、次のような基本指標を確認します。

  • 平均値(平均的な売上や単価)
  • 中央値(データの中心を示す値)
  • 標準偏差(ばらつきの大きさ)

さらに、データをグラフで可視化することで、異常値や傾向が見えてきます。 ソフトウェア開発で扱うPython言語では、次のようなコードで簡単に可視化できます。


import seaborn as sns
import matplotlib.pyplot as plt
import pandas as pd

# サンプルデータ(営業担当ごとの月間売上)
data = pd.DataFrame({
    '担当者': ['A', 'B', 'C', 'D', 'E'],
    '売上': [320, 280, 400, 150, 370]
})

# 棒グラフで可視化
sns.barplot(x='担当者', y='売上', data=data)
plt.title('営業担当別の売上比較')
plt.show()

このように、数字の羅列では見えなかった「偏り」や「強み・弱み」が一目でわかります。


問題の“原因”を探る:クロス集計と相関分析

次に、「何と何が関係しているのか?」を見極める段階です。
たとえば「商談回数が多い人ほど成約率が高いのか?」「提案件数と売上は比例しているのか?」などを確認します。

こうしたときに使えるのが、クロス集計相関分析です。


# 相関分析の例
sales_data = pd.DataFrame({
    '商談回数': [5, 8, 3, 10, 6],
    '成約率': [0.2, 0.5, 0.1, 0.7, 0.4]
})

# 相関係数の計算
correlation = sales_data.corr()
print(correlation)

相関係数が+1に近いほど強い正の関係-1に近いほど逆の関係を意味します。 この結果を見れば、「努力が報われているのか」「見込みの低い活動に時間を割いていないか」などを判断できます。


経営改善に直結する分析:ABC分析・回帰分析・クラスタリング

さらに踏み込むと、データ分析は経営レベルの意思決定にも役立ちます。

① ABC分析 ─ 売上の構成を可視化

全売上を「重要度」に応じてA(上位20%)、B(中位30%)、C(下位50%)に分類し、重点顧客を特定します。 売上の80%を生み出す上位20%の顧客が誰かを知ることで、リソース配分を最適化できます。

② 回帰分析 ─ 売上に影響を与える要因を特定

Pythonの scikit-learn を使えば、「商談数」「提案単価」「訪問頻度」など複数要因から売上を予測できます。 これにより、「どの要因を伸ばせば売上が上がるか」が明確になります。

③ クラスタリング ─ 顧客をグループ化

顧客の属性や行動パターンをもとにグループ分けすることで、 「価格重視型」「関係重視型」「新規志向型」など、戦略的なアプローチが可能になります。


実際の成功事例:データ分析が導いた“見えなかった真実”

ある建設関連会社では、営業部門の成約率が長年20%前後で停滞していました。
データを分析したところ、「問い合わせ対応までの平均時間」「成約率」の間に強い相関があることが判明。 初回対応が24時間以内の案件では成約率が2倍近くに跳ね上がっていたのです。

これを受け、同社は問い合わせ通知を自動化し、即対応体制を整備。
結果、わずか3か月で成約率が20% → 38%に改善しました。

つまり、「勘ではなくデータで見る」ことが、経営改善の最短ルートなのです。


まとめ ─ データは“判断の武器”になる

データ分析は、難しい統計の世界ではなく、経営の意思決定を支える実務ツールです。
事実に基づいて課題を特定し、根拠あるアクションを取る。 それが今、求められるデータドリブン経営の本質です。

次回からは、具体的な分析手法(t検定、回帰分析、クラスタリングなど)をPythonを使って実際に試していきます。
初心者でも理解できるステップで、「データを活かす営業・経営」へと進化するプロセスを解説していきます。


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