第2回:なぜデータ分析が営業に必要なのか ─ 勘と経験の営業から、根拠と再現性の営業へ
営業の現場では、いまだに「経験豊富なベテラン営業」が成果を支えるケースが少なくありません。
しかし一方で、同じ商品・同じ顧客層を扱っているのに、営業担当によって成果に大きな差が出ることもあります。
この違いを生み出している要因こそが、「データの活用度合い」です。
つまり、成果を出す営業とそうでない営業の差は、勘ではなくデータに基づく判断力にあるのです。
勘と経験の営業が限界を迎えている理由
従来の営業では、「勘」「経験」「人脈」が重視されてきました。
確かに、過去の成功体験や業界の肌感覚は重要な資産です。
しかし、市場の変化が激しい今、その“勘”が通用しなくなりつつあります。
例えば、次のような状況は多くの企業が直面しています。
- 顧客の購買プロセスがオンライン化し、接点が多様化している
- 営業担当ごとに記録や報告の仕方がバラバラで、情報共有が難しい
- 「なぜ売れたのか」「なぜ失注したのか」が曖昧なまま繰り返されている
つまり、データを蓄積・分析していなければ、「何が成果を生み」「何が失敗を招いたのか」を検証できないのです。
データ分析で営業が変わる──3つの視点
では、実際にデータ分析を取り入れると営業活動はどう変わるのでしょうか?
ここでは3つの観点から整理してみます。
① ターゲティングの精度が高まる
過去の商談データを分析すると、成約率の高い顧客には一定の傾向があることが分かります。
たとえば「従業員規模100名以下の製造業」「2回以上の問い合わせ経験がある企業」「資料請求から1週間以内に反応した見込み客」など。
こうした傾向を掴むことで、“見込みの高い顧客”を優先的に攻めることができます。
② 商談の再現性が生まれる
属人的な営業では、「なぜ契約が取れたのか」が感覚に頼りがちです。
しかし、データをもとに分析することで「どの提案資料」「どのタイミング」「どんな訴求」が効果的だったかが明確になります。
これにより、新人営業でもベテランと同等の成果を出せる仕組み化が可能になります。
③ マネジメントが科学的になる
営業マネージャーにとっても、データ分析は強力な武器です。
個人ごとの活動量・商談率・成約率などを数値で可視化すれば、感情論ではなく事実に基づいた指導ができます。
また、データから課題を抽出することで、チーム全体の改善ポイントが明確になります。
“売れない原因”はデータの中にある
売上が伸び悩むと、「営業の数が足りない」「気合が足りない」といった精神論に走りがちです。
しかし、実際には多くの問題は「データを分析していないこと」に起因しています。
たとえば、以下のようなケースがあります。
- 成約率が低い原因は、実は「初回対応の遅れ」だった
- 売上の大半が「上位10社のリピーター」に依存していた
- 広告反響があるのに、営業への連携が遅れて機会損失していた
これらはすべて、データを正しく分析すれば可視化できる事実です。
そして、その“事実”をもとに改善策を講じることで、営業活動の生産性は飛躍的に向上します。
データ分析で変わる「営業の3つのステージ」
- 記録のステージ: 営業活動のデータを残す(CRMやスプレッドシートなど)
- 分析のステージ: データから傾向や問題点を可視化する
- 実行のステージ: 分析結果をもとに施策を実行し、再びデータで検証する
この循環を回すことで、営業は単なる「作業」から「科学的な経営戦略」へと進化します。
データ分析の目的は単に数字を眺めることではなく、行動を変えるための気づきを得ることにあります。
まとめ ─ データが“勝てる営業”をつくる
営業は「人間力」だけで勝負する時代ではなくなりました。
いま求められているのは、人間の感性とデータの力を掛け合わせる営業です。
データ分析を活用すれば、営業の再現性が高まり、チーム全体の底上げが可能になります。
つまり、営業の成功は偶然ではなく、データによって再現できる必然に変えられるのです。
次回予告:
「第3回:データ分析は経営課題の根本原因を教えてくれる」
── 売上停滞・人材不足・営業効率化…そのすべての答えはデータの中に。



