【第4回】企業タイプ別「最適なツール選び」マップ|Exment・kintone・FileMakerのベストな選び方を徹底解説
第3回では、Exment・kintone・FileMakerの構造や操作性、ノーコード性、運用負担の違いを徹底比較しました。
第4回となる今回は、より実務に直結する視点から「では、自社に合うのはどれか?」という疑問に答えるため、企業タイプ別に最適なツールを分かりやすく分類します。
中小企業では、DXの専門家が社内にいないことも多く、「そもそも何を基準に選べば良いのか分からない」という声が非常に多くあります。
ここでは、業務規模・ITスキル・社内文化・改善スタイルなど、実務ベースの判断材料をまとめた“最適ツール選びマップ”を作成しました。
1. まず押さえたい「ツール選定の4つの判断軸」
企業がツール選びで迷わないためには、次の4つの視点が不可欠です。
- ① 現場のITスキル(Excelレベルか、プログラム経験者がいるか)
- ② 社内の改善スタイル(現場主導か、情シス主導か)
- ③ 業務の複雑度(単純な管理か、特殊フローが必要か)
- ④ 運用負担に耐えられるか(改善を継続できるか)
この4軸で整理すると、3つのツールの向き不向きが明確になります。
2. 【企業タイプ別】最適ツール選びマップ
ここでは、代表的な企業タイプ別に、最適なツールとその理由を解説します。
■ タイプ①:Excel中心で業務管理をしている中小企業 → Exment一択
Excelユーザーがそのまま移行しやすいのは間違いなくExmentです。 理由は次の通りです。
- Excelの“表”感覚そのままで扱える
- 学習コストが非常に低い
- 担当者自身が改善しながら育てられる
- 運用負担が最も少ない
- 初期コストが低く、小さく始められる
たとえば、福祉施設の利用者管理や、工事業の案件管理、営業リスト、在庫管理など、Excelで整理できている業務ほどExmentと相性が良く、ほとんど“置き換えるだけ”で機能します。
<事例:福祉施設C法人>
C法人では、利用者管理・請求情報・記録の大部分をExcelで行っていました。
- 担当者しか分からない“謎関数”が多数
- ファイルが増えすぎて最新版が不明
- 請求書作成時に毎月ミスが発生
Exmentへ移行したことで、
- 利用者情報が一元化
- 権限管理で職員の使い分けが明確化
- 請求データが自動集計されミスゼロへ
「Excelのストレスから解放された」という声が出るほど効果が高く、Exmentの得意領域がよく分かる事例です。
■ タイプ②:部署ごとに“多数のアプリ”が必要 → kintoneが有利
kintoneはアプリを大量に作れるため、 ・部署ごとに業務管理アプリを作りたい ・ワークフローや承認フローを統一したい という企業に向いています。
特に、営業部・総務部・経理部など、複数の部署が存在する中規模企業で力を発揮します。
kintoneが向いている企業の特徴
- 社内にITリテラシーがある程度ある
- アプリ管理ルールを整備できる
- 全社的なデータ連携をしたい
- APIやプラグインを積極的に活用できる
<事例:製造業D社>
D社では、営業、工場、管理部門がそれぞれ業務アプリを作り、情報を一元管理しました。
- 在庫アプリと受注アプリを連携
- 営業の見積アプリから工場の作業指示まで連携
- 承認フローも標準機能で実現
情シスが関与しやすい環境では、kintoneの柔軟性が強みになります。
■ タイプ③:業務が特殊・複雑で“独自フローが必須” → FileMakerが最適
FileMakerはアプリ開発の自由度が非常に高く、 独自の現場ロジックや特殊業務 をそのままシステム化できます。
特に次のような企業で採用されやすいです。
- 工場の特殊工程管理
- 在庫・検査・製造の複雑なルール管理
- オフライン環境での運用が必要
- 専任の開発会社と長期運用する体制がある
<事例:工場系E社>
E社では検査工程が複雑で、Excelでもクラウドでも管理が困難でした。
- FileMakerで検査アプリを完全にカスタム
- バーコード読み取りも統合
- 現場作業の流れに合わせたUIを構築
高度な開発が必要な代わりに、 “唯一無二のシステム”を作りたい企業には最適です。
3. 間違えやすい“選定の落とし穴”
ここまでの説明を踏まえても、多くの企業が次のような勘違いをします。
■ 落とし穴①:「機能が多いほうが良い」
実際には、機能が多すぎると現場が扱えなくなり、 “死蔵システム”になります。
■ 落とし穴②:「とりあえずkintoneで」
アプリ乱立により、逆に混乱するケースが非常に多いです。
■ 落とし穴③:「FileMakerなら何でもできる」
正しくは、 “できるが運用コストが高く、小規模企業には不向き”です。
4. 総まとめ:企業タイプ別の最適解
| 企業タイプ | 最適ツール | 理由 |
|---|---|---|
| Excel中心の中小企業 | Exment | 最もスムーズに移行でき、運用負担が少ない |
| 部署が多く、ITスキルもある程度ある | kintone | アプリの拡張性と連携が強い |
| 特殊業務・高度なカスタムフローが必要 | FileMaker | 柔軟なアプリ構築が可能 |
5. 次回予告:中小企業DXの“成功と失敗”を深掘り
第5回では、実際に多くの企業をサポートして分かった 「DX導入の成功パターンと失敗パターン」 を徹底解説します。
特に、Excel文化の中小企業だからこそ陥りやすい落とし穴を詳しく紹介し、 成功する企業の共通点を明らかにします。


