【第3回】Exment・kintone・FileMakerを徹底比較|構造・操作性・ノーコード性・運用負担の本質的な違い
前回までの記事では、Excelユーザーのつまずくポイントと、それをどのようにExmentが解消するのかを解説しました。
第3回の今回は、実際に企業が導入候補として比較することの多い「Exment」「kintone」「FileMaker」の3ツールを、専門知識がない方にも分かりやすく“本質的な違い”として整理します。
よくある「機能一覧の比較」ではなく、構造・ノーコード性・操作性・運用負担・サポート体制といった、導入後に効いてくる重要ポイントを中心に解説します。
1. まずは結論:3つのツールは“思想”がまったく違う
3つのツールは、同じように「業務管理システムを作れるサービス」ではありますが、根本の思想が大きく異なります。
| ツール | 根本思想 |
|---|---|
| Exment | Excelユーザーでも扱える“ノーコードWebデータベース” |
| kintone | アプリをたくさん作って全社で使う“クラウド業務基盤” |
| FileMaker | 開発会社と構築する“高自由度アプリ開発プラットフォーム” |
つまり、3つは「似ているようで全然似ていない」ツールなのです。 この違いを理解しないまま導入すると、DXプロジェクトが迷走してしまいます。
2. データベース構造の違い:操作性に直結する最重要ポイント
■ Exment:Excelに最も近い“テーブル(表)構造”
Exmentは、Excelのシート構造をそのままWeb化したようなデータベースです。
- 行 → データ1件
- 列 → 項目
- シート → テーブル
この構造がExcelユーザーには非常に理解しやすく、 現場の担当者でも項目の編集が可能です。
■ kintone:“アプリ”という箱でデータを管理
kintoneは Excelのような「表」ではなく、1つのアプリが1つのデータの箱になっています。
アプリ同士の連携も可能ですが、
- 部署ごとにアプリを作りすぎる
- アプリの関係性が複雑化
- どこにデータがあるか分からなくなる
といった問題が起こりやすく、 情シスがない企業では運用が難しい点に注意が必要です。
■ FileMaker:本格的なリレーショナルデータベース
FileMakerは設計の自由度が圧倒的に高く、複雑な業務にも対応できます。
しかしその分、
- データベースの基礎知識が必要
- 開発会社なしでは構築が難しい
- 設定変更にも専門スキルが必要
という特徴があり、中小企業が内製で扱うにはハードルが高いことが実情です。
3. ノーコード性の比較:「現場が自分で改善できるか」が決定的差
導入後に企業の命運を分けるのは、実は「ノーコード性」。 つまり、現場が自分たちでシステムを手直しできるかどうか、です。
| ツール | ノーコード度 | 解説 |
|---|---|---|
| Exment | ◎(最もノーコード寄り) | 列を増やす感覚でDB設計ができる |
| kintone | ○(基本はノーコード) | 複雑なアプリはJavaScript前提になる |
| FileMaker | △(ローコード) | スクリプト必須。実質的に外注開発 |
特に中小企業では、 「現場が自力で改善できる」=運用が継続する ため、このポイントはとても重要です。
4. 運用負担の違い:導入時より“導入後”が大事
ツールの良し悪しは、導入ではなく運用で決まります。
■ Exment:運用負担が最も少ない
- 現場で調整可能
- テーブルの構造も変更しやすい
- 運用ルールの統一がしやすい
“管理者1人で回せる”ケースが多いのがExmentの強みです。
■ kintone:アプリが増えるほど管理負担が増大
アプリを自由に作れるがゆえに、
- 部署ごとにアプリが乱立
- データがバラバラになる
- 運用の統一が難しくなる
これが、kintoneでよく起きる“運用疲れ”の原因です。
■ FileMaker:専任の開発会社との長期運用前提
仕様変更するたびに開発依頼が必要で、 そのたびコストと時間がかかります。
小規模企業にはハードルが高いのが実情です。
5. サポート体制の違い:中小企業はここを最重視すべき
中小企業で最も起こりやすいのが、 「そもそも何を質問すればいいか分からない」問題。
だからこそ、サポート体制の質は重要です。
| ツール | サポート特徴 |
|---|---|
| Exment | 導入支援・業務整理・テンプレ構築まで伴走 |
| kintone | チャット・コミュニティ中心。個別相談は弱い |
| FileMaker | 開発会社に依存。会社ごとの差が大きい |
6. 小さな事例で見る「3ツールの違い」
■ A社:資格管理が複雑になりExmentへ移行
A社では、社員の安全教育・資格管理をExcelで行っていましたが、更新が複雑化していました。
- Exmentの履歴管理で変更履歴が自動記録
- 担当者が自分で項目を追加できる
- クラウド化でどこでも確認可能
結果、担当の負担が半減し、ミスが激減しました。
■ B社:部署ごとにアプリを作りすぎてkintoneが破綻
部署ごとにアプリを作った結果、
- アプリの数が50以上に増加
- どこにデータがあるか分からない状態に
- 結局、Excelに逆戻り
運用ルールを作れない企業では、kintoneが過剰に自由すぎるケースがあります。
■ C社:FileMakerで高度なシステムを構築
FileMakerは専門会社と組めば強力です。
- 工場の特殊業務を完全にシステム化
- 複雑なルールもスクリプトで表現
ただし、改善のたびに開発依頼が必要なため、 “小規模で頻繁に改善したい”企業には不向きです。
7. まとめ:ExcelユーザーにはExmentが最も扱いやすい
3つのツールは用途・思想がまったく異なりますが、 Excel文化の企業が最も無理なく移行できるのはExmentです。
理由は以下の通りです。
- Excelに近い構造で直感的に扱える
- ノーコードで現場が改善できる
- 運用負担が小さく継続しやすい
- 導入支援が手厚く迷わない
次回の第4回では、 「企業タイプ別にどのツールが向いているか?」 を、 より具体的な判断基準として整理します。


