【第1回】Exment・kintone・FileMaker ― 主要3ツールの全体像と選び方の基準
中小企業の現場では、日々の業務管理の多くをExcelで行っています。しかし、業務が増えるほど「ファイルが乱立」「更新者が限定される」「集計作業が煩雑」など、多くの課題が表面化します。
こうした背景から、最近は「Excelの限界を超えて業務を効率化できるツール」を探す企業が急増しています。代表的な選択肢が Exment、kintone(キントーン)、そして FileMaker(ファイルメーカー) の3つです。
本シリーズでは、初心者でも理解しやすいように、3ツールの違いを丁寧に比較しながら、最終的に「自社にはどれが最適なのか?」を判断できる知識をお届けします。
第1回の今回は、まず全体像とツール選定の基準を整理します。
1. なぜ今、Excelから脱却する企業が増えているのか?
Excelは優秀なツールですが、以下のような限界があります。
- 複数のファイルでデータが分散し、最新版が分からなくなる
- 担当者しか分からない関数・マクロで属人化が起きる
- 複数人で同時編集しにくく、テレワークに弱い
- 履歴管理・アクセス管理ができない
特に中小企業では、「Excelの限界に気づいた時点で既に業務が破綻していた」というケースが珍しくありません。
そのため、近年の中小企業DXでは「Excelからの脱却」を第一ステップとして捉える動きが加速しています。
2. 主要3ツールの立ち位置を分かりやすく整理
Exment、kintone、FileMakerの3つは、どれも業務改善に役立つ強力なツールですが、思想がまったく異なります。
| ツール | 特徴 | 向いている企業 |
|---|---|---|
| Exment | Excelユーザー向けのノーコードWebデータベース | Excel管理から無理なく移行したい中小企業 |
| kintone | 複数アプリを作って運用できるクラウド基盤 | 情シスがあり、全社アプリ開発をしたい企業 |
| FileMaker | 自由度の高い開発基盤。独自業務に強い | 特殊業務・工場系・要件が複雑な企業 |
3. ツール選定で最も重要なのは「現場が運用できるか」
多くの企業がDXに失敗する理由は、「ツールが高度」だからではありません。 一番の原因は “現場が運用し続けられない” ことです。
例えば、大手の製造業A社ではkintoneを導入しましたが、アプリが乱立しすぎて管理が破綻。
「どの部署が使っているのか分からないアプリが増え、現場が混乱してしまった…」
こうしたケースの多くは、「現場で改善し続けられるかどうか」を先に考えず、 “ツールの機能”だけで判断してしまった結果です。
■ 重要なのは「現場が自分たちで手入れできるか」
中小企業に最適なツールを考える際、以下の視点が非常に重要です。
- 現場の社員が自力で項目の修正・追加ができるか?
- Excelからの移行がスムーズか?
- 専門スキルを必要としないか?
- サポートとの距離が近いか?
この観点で見ると、最も「扱いやすい」のがExmentである理由が見えてきます。
4. ケース紹介:Excelから脱却に失敗した企業と成功した企業
■ 失敗例:アプリ構築に時間を取られて業務が止まった
B社(社員30名)はkintoneを導入したものの、アプリ設計が難しく、現場が混乱。
「アプリが多すぎて目的が分からない」 「結局、元のExcelに戻ってしまった…」
システムに詳しい担当者がいない企業では、こうした問題が多発します。
■ 成功例:Excelの延長で始められたExment導入
C社(社員20名)はExmentを導入し、Excelで管理していた「資料請求管理」を移行。
- CSV取り込みで10年分のデータを移行
- 担当者が自分で項目を追加
- 意見をもとに画面をその場で改善
結果として、導入から1ヶ月で運用が定着し、社内評価が一気に向上しました。
Exmentは「難しくない」「Excelの延長」で扱えるため、初めてのDXに向いているのです。
5. 本シリーズのゴール:あなたの会社に最適な選択を導く
このシリーズ(全6回)では、以下を明確にします。
- Exment・kintone・FileMakerの核心的な違い
- 自社の規模・スキル・業務に合った選定基準
- DX導入で失敗しないためのポイント
- 実際の導入事例を通じてイメージを掴む
第2回では、「Excelユーザーがつまずくポイント」と「Exmentの設計思想」をさらに深掘りしていきます。
中小企業のDXは難しくありません。 “正しい選択”と“無理のない設計”から始めれば、必ず前へ進みます。



