第4回:Accessまだ使ってる?PowerQueryとデータモデルでExcelがデータベースになる!
「Accessを使える人がいない」「Excelだと表が増えすぎて管理が大変」「部署ごとに別ファイルで運用していて整合性が取れない」―― そんな課題を抱えている中小企業は少なくありません。
でも実は、もうAccessに頼る必要はありません。 ExcelのPowerQueryとデータモデルを組み合わせれば、 Excelだけで“データベース的な管理”ができるのです。
そして、この仕組みはExmentのようなクラウドデータベースと構造的にほぼ同じ。 この記事では、実際にExcelを“簡易データベース化”する手順と、 Exmentへスムーズに移行できる考え方を詳しく解説します。
目次
- 1. 現場あるある:Access担当者がいなくて更新できない
- 2. Excelの限界:表が増えると整合性が取れない
- 3. データモデルとは?Excelがデータベースになる仕組み
- 4. 実践!PowerQuery+データモデルで複数表をつなぐ
- 5. リレーションの考え方とExmentとの共通構造
- 6. Before→After:Access依存からの脱却
- 7. まとめと次回予告
- 8. ReadBellの支援内容
- FAQ
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1. 現場あるある:Access担当者がいなくて更新できない
中小企業でよく見られるのが「Accessで顧客管理していたけど、担当が辞めてメンテできない」というケース。 Accessは強力なデータベースですが、専門知識が必要です。
フォームやクエリを少し変更するだけでも「エラーが出て怖い」「修正できない」など、 結局、Excelに戻して手作業で更新している企業も多いのではないでしょうか。それに、Accessのファイルを共有フォルダで同時編集すると壊れるリスクもあり、 「もうAccessは触らないでおこう」という現場判断で放置されがちです。
また、Office製品を購入する際には、Accessが別途付属したライセンスパッケージを購入する必要があるなど予想外の出費があったりもします。
2. Excelの限界:表が増えると整合性が取れない
Excelは扱いやすい反面、「表が独立して存在する」ため、 複数の表の整合性を保つのが難しくなります。
例えばこんな状態になっていませんか?
- 顧客リスト.xlsx(顧客名・住所)
- 売上リスト.xlsx(顧客名・金額)
- 請求リスト.xlsx(顧客名・請求日)
それぞれのファイルで顧客名を入力しているため、 誤字・表記ゆれ・更新漏れが頻発。 「同じ顧客なのに3つのファイルで金額が違う」というトラブルも起こります。
これを防ぐには、「1つの顧客マスターに対して売上・請求データを紐付ける」構造が必要です。 まさに、それを実現するのがExcelのデータモデルです。
3. データモデルとは?Excelがデータベースになる仕組み
Excelのデータモデルとは、複数のテーブルを“リレーション(関連付け)”して管理する仕組み。 AccessやExmentのような本格的なデータベースと考え方は同じです。
簡単に言えば、次のような関係を作ります:
| マスター | 詳細データ | 関連キー |
|---|---|---|
| 顧客マスター(顧客ID, 名前) | 売上データ(顧客ID, 金額) | 顧客ID |
| 商品マスター(商品コード, 商品名) | 受注明細(商品コード, 数量) | 商品コード |
つまり、「顧客ID」や「商品コード」を“共通キー”として、 複数の表を1つのデータモデル上でつなぐイメージです。
このデータモデルを使うと、ピボットテーブルやPowerPivotで 「顧客別売上」「商品別受注」「月別推移」などを瞬時に集計できるようになります。
4. 実践!PowerQuery+データモデルで複数表をつなぐ
では、実際にExcelでデータモデルを構築してみましょう。
① データの準備
次の3つのシートを用意します。
- 顧客マスター:顧客ID, 顧客名, 担当者
- 売上データ:売上ID, 顧客ID, 金額, 日付
- 商品マスター:商品コード, 商品名, 単価
② PowerQueryで取り込み
[データ] → [データの取得] → [テーブルまたは範囲から] を選択。 それぞれのシートをPowerQueryエディタで整形し、 列名を統一(例:顧客ID → customer_id)しておきます。
③ データモデルに追加
[ホーム] → [閉じて読み込む] → [データモデルに追加] を選択。 この操作で、複数テーブルがExcel内部の「データモデル」に登録されます。
④ リレーションの作成
[データ] → [リレーションの管理] をクリック。 顧客マスターの「顧客ID」と売上データの「顧客ID」を関連付けます。
これで、顧客と売上が“つながる”構造が完成! Accessのリレーション設定と全く同じ仕組みです。
⑤ ピボットで分析
[挿入] → [ピボットテーブル] → [このブックのデータモデルを使用] を選択。 行に顧客名、列に月、値に売上金額を設定すれば、 自動的に“顧客別・月別売上集計”が完成します。
5. リレーションの考え方とExmentとの共通構造
ここまでの仕組みは、Exmentのデータ構造とほぼ同じです。 Exmentでも「テーブル(顧客・売上)」を関連付け、 画面上で「顧客情報から売上履歴を表示」できます。
違いは次の通りです:
| 項目 | Excel(データモデル) | Exment |
|---|---|---|
| 保存場所 | ローカルファイル | クラウドデータベース |
| 関連付け | 手動リレーション | ノーコード設定 |
| 同時編集 | 不可(上書き注意) | 複数人で同時操作可能 |
| 履歴・権限 | 手動で管理 | 自動で記録・制御 |
つまり、Excelのデータモデルは「一人用データベース」ですが、 Exmentは「チームで使うクラウドデータベース」。 Excelで基礎を理解しておけば、Exment導入は驚くほどスムーズになります。
6. Before→After:Access依存からの脱却
| Before(Access運用) | After(Excelデータモデル) |
|---|---|
| 専門知識が必要 | Excel操作だけで管理可能 |
| ファイル破損リスクあり | Excel標準機能で安定稼働 |
| 担当者依存 | 誰でも更新できる |
| フォーム変更が難しい | PowerQueryで簡単整形 |
| データ共有に制限 | クラウド保存で共有可能 |
ある製造業の例では、Accessで管理していた在庫台帳をExcel+データモデルに移行。 担当者以外でも簡単に更新できるようになり、在庫照会作業が1日から15分に短縮されました。
この状態まで整えれば、次のステップ――Exment導入でリアルタイム共有――へスムーズに進めます。
7. まとめと次回予告
- Excelのデータモデルは“ミニデータベース”
- Accessのようなリレーション構造をExcelでも再現可能
- PowerQueryで複数データを自動結合できる
- Exmentへの移行も、Excel構造をそのまま活かせる
次回は「第5回:社内のデータ活用は“Excelから始める”が正解!」。 いよいよExcelとExmentの“根本的な違い”――ファイル管理とデータベース管理の違いを掘り下げます。
8. ReadBellの支援内容
ReadBellでは、AccessやExcelの既存データをExmentへ安全に移行する支援を行っています。 「Access担当がいない」「Excelで限界を感じている」そんな企業様に向け、 テンプレート提供・初期構築・運用サポートをワンストップで提供します。
FAQ
- Q1:データモデルはどのExcelで使えますか?
→ Excel 2016以降またはMicrosoft 365で利用可能です。 - Q2:PowerQueryとデータモデルの違いは?
→ PowerQueryは“データの加工”、データモデルは“関係の管理”です。 - Q3:Accessから直接移行できますか?
→ はい。AccessデータをExcelにエクスポートし、PowerQueryで整形できます。 - Q4:Exment導入後もExcelを使えますか?
→ はい。ExmentのデータをExcelでレポート出力できます。
Accessの時代は終わり。Excelで“つながるデータ管理”を始めましょう。

