第2回 とはいえ、AI導入はやっぱり怖い
― 経営者が無意識にブレーキを踏んでしまう本当の理由 ―
第1回では、
AIはすでに現場に入り込んでいるという現実を見てきました。
それでも多くの経営者が、心のどこかでこう感じているはずです。
「とはいえ、AI導入はやっぱり怖い」
「うちの会社には、まだ早い気がする」
この感覚は、決しておかしなものではありません。
むしろ、経営者として非常に自然な反応です。
なぜなら、その不安の正体は
「AI」そのものではないからです。
「AIが怖い」のではなく、「読めない」のが怖い
経営者が感じる不安を、少し分解してみましょう。
・どれくらいコストがかかるのか分からない
・何ができて、何ができないのか分からない
・失敗したとき、誰が責任を取るのか分からない
・現場が混乱しないか分からない
共通しているのは、
**「先が読めない」**という点です。
中小企業経営において、
先が読めない投資ほど怖いものはありません。
だから経営者は、
無意識のうちにブレーキを踏みます。
これは慎重すぎるのではなく、
これまで会社を守ってきた判断力そのものです。
過去のIT導入体験が、ブレーキを強くする
もう一つ、AIに対する警戒心を強めている要因があります。
それは、過去のIT導入体験です。
・高額なシステムを入れたが、現場で使われなかった
・導入時は便利だったが、結局メンテナンスできなくなった
・担当者しか分からない“ブラックボックス”が増えた
こうした経験を一度でもすると、
経営者の頭の中には、自然とこうした式が出来上がります。
「新しいIT = 大変なもの」
AIという言葉を聞いた瞬間、
この記憶が呼び起こされてしまうのです。
でも、AIはこれまでのITとは性質が違う
ここで、一度立ち止まって考えてみてください。
AIは、
「会社全体で一斉に切り替える仕組み」でしょうか。
実は違います。
ChatGPT や Gemini が広がった理由は、
トップダウンで導入されたからではありません。
個人が、勝手に使い始めたからです。
・マニュアルがなくても使える
・失敗しても業務が止まらない
・使わなくても、今の仕事は続けられる
これまでのIT導入とは、
まったく逆の広がり方をしています。
それなのに経営者は、
無意識のうちに「従来型IT導入」の枠で
AIを見てしまっているのです。
本当の不安は「AI」ではなく「社内の状態」
ここで、少し核心に触れます。
AI導入に不安を感じる経営者ほど、
実はこうした懸念を持っています。
・今の業務フローを説明できない
・誰が何をやっているか、完全には把握できていない
・属人化している業務が多い
この状態でAIの話をされると、
不安になるのは当然です。
なぜなら、
AIは、会社の“今の姿”を浮き彫りにしてしまう
からです。
業務が整理されていなければ、
整理されていないことが露呈する。
データがバラバラなら、
バラバラであることが明確になる。
だから経営者は、
AIの話題そのものを避けたくなってしまう。
AIは「経営判断」を迫る存在でもある
もう一つ、見逃せないポイントがあります。
AIは、単なる効率化ツールではありません。
使い方によっては、
・判断基準を明確にする
・仕事のやり方を見直す
・「今まで通り」を問い直す
こうした変化を、
経営者に静かに迫ってきます。
つまりAIは、
導入するかどうか以前に、
経営のあり方を問う存在
でもあるのです。
だからこそ、
本能的に「怖い」と感じてしまう。
それでも、避け続けるのが正解とは限らない
ここまで読むと、
「やっぱりAIは触らない方がいいのでは?」
と思うかもしれません。
ですが、現実はこうです。
AIは、
・使うかどうかに関係なく
・会社の外側で進化し
・社員の内側に入り込んでいる
止めることはできません。
では、どう向き合うのが正解なのでしょうか。
答えは意外とシンプルです。
いきなりAIを入れようとしないこと
そして、
AIが入っても困らない会社の状態を作ること
です。
次回予告
次回は、
「AIの前に、なぜ業務整理が必要なのか」
というテーマで進めます。
AIが活きない会社には、
ある共通した特徴があります。
そしてそれは、
特別な会社ではなく
ごく普通の中小企業に当てはまるものです。
AIの話なのに、
次回もほとんど技術の話は出てきません。
代わりに見えてくるのは、
**経営と現場の“ズレ”**です。

