第3回 Excelは悪者じゃない
―「表計算止まり」が会社を止めているだけ ―
第2回では、DXや業務改善がうまくいかない会社に共通する失敗パターンについてお話しました。
読み進めながら、
「うちも、まさにこれだ…」
「気づいたら同じことをしている」
そんな風に感じた方も多いのではないでしょうか。
その中で、特に誤解されやすい存在があります。
それが Excel です。
「DXをやるなら、Excelはもう古い?」
業務改善やDXの話になると、よくこんな言葉を耳にします。
「Excel管理はもう限界」
「ExcelをやめないとDXは進まない」
「そろそろシステム化しないと」
確かに、Excelには限界があります。
ですが、ここで一つはっきりさせておきたいことがあります。
Excelそのものが悪いわけではありません。
問題なのは、
Excelを“表計算のまま”使い続けていること なのです。
なぜ日本の会社はExcelを使い続けているのか
そもそも、なぜ多くの会社でExcelが使われているのでしょうか。
理由はとても明確です。
・誰でも触れる
・導入コストがほぼゼロ
・柔軟に作り変えられる
・現場の工夫がすぐ反映できる
これらは、中小企業にとって非常に大きなメリットです。
特に、
「業務が頻繁に変わる」
「決まった型がまだない」
という会社では、Excelの柔軟性は大きな武器になります。
つまりExcelは、
現場に寄り添ってきた“優秀な道具” なのです。
本当の問題は「Excelが増えすぎること」
では、どこから問題が起きるのでしょうか。
それは、Excelファイルが増え、
役割が曖昧になったときです。
・担当者ごとに管理表がある
・似たようなExcelが複数存在する
・どれが正しいか分からない
・引き継ぎができない
こうなると、Excelは便利な道具ではなく、
混乱の原因 になってしまいます。
Excelで管理している“つもり”でも、
実際には 人の記憶と経験に依存 している状態です。
「表計算」と「業務管理」は別物
ここで、重要な考え方を一つ整理しましょう。
表計算と業務管理は、似ているようで全く違います。
表計算は、
・計算する
・集計する
・分析する
のが得意です。
一方、業務管理では、
・誰が
・いつ
・どの状態か
・履歴はどうか
といった情報を、
継続的に・正確に管理する必要 があります。
Excelを表計算の延長で使い続けると、
この「管理」の部分がどうしても弱くなります。
これが、
「表計算止まりのExcel」 と呼ばれる状態です。
Excelが得意な業務・苦手な業務
ここで、Excelの役割を整理してみましょう。
Excelが得意なこと
・データ入力
・その場での集計や加工
・試行錯誤
・一時的な管理
Excelが苦手なこと
・履歴管理
・複数人での同時利用
・権限管理
・「最新版」を保証すること
問題は、
苦手なことまでExcelにやらせている
ことにあります。
これはExcelの限界ではなく、
役割分担ができていないだけ なのです。
Excelを「捨てる」のではなく「位置づける」
DXや業務改善を考えるとき、
Excelを捨てる必要はありません。
必要なのは、
Excelの役割をはっきりさせること です。
例えば、
・入力や確認はExcel
・計算や集計もExcel
・でも「正のデータ」は別で管理する
こうした考え方をすると、
Excelは再び力を発揮し始めます。
Excelが“フロント”として活躍し、
裏側でデータが整理されている。
この状態になると、
・入力が楽
・探す時間が減る
・引き継ぎが楽になる
といった効果が自然に生まれます。
Excelを活かすと、社員の動きが変わる
ここで見逃せないポイントがあります。
Excelを正しく位置づけると、
社員の意識が変わり始める のです。
・入力が楽になる
・迷いが減る
・確認作業が減る
すると社員は、
「ここ、もっと簡単にできませんか?」
「この項目、要らないかもしれません」
と、自分から改善を考え始めます。
これは、
仕組みが人を育てている状態 です。
逆に、Excelが混乱したままだと、
社員は「回すだけ」で精一杯になります。
Excelを否定すると、改善は止まる
業務改善が失敗する会社では、
Excelが悪者にされがちです。
ですが、それは現場の努力を否定することにもなります。
「これまで頑張って作ってきたExcelがダメだった」
そう感じた瞬間、
社員のモチベーションは一気に下がります。
Excelを否定せず、
活かす前提で再設計する。
これが、中小企業のDXや業務改善では
非常に重要な姿勢です。
次回予告
では、
Excelを活かしながら、
「表計算止まり」から抜け出すには、
具体的にどんな考え方が必要なのでしょうか。
次回は、
Excel業務を壊さずに進化させる方法 として、
ここまでの話を一つの言葉で整理します。
そのキーワードが、
「デジタイゼーション」 です。

