Excel表計算から一歩進む 実務活用ガイド
第3回 セル番地より「名前」で考えるExcel
― 名前の定義を使うだけで、Excelが“計算表”から“設計図”に変わる ―
Excelの数式を見て、
「このセル、何のためにあるんだろう?」
と感じたことはありませんか。
=E5*1.1
この式を見て、すぐに意味が分かるでしょうか。
・なぜ 1.1 を掛けているのか
・この 1.1 は何を表しているのか
・将来この数値が変わったらどうするのか
こうした疑問が浮かぶExcelファイルは、
決して珍しくありません。
そしてこれは、
Excelが苦手な人だけの問題ではありません。
Excelを長く使っている人ほど、
「セル番地と数字の羅列」に苦しんでいる
というケースも非常に多いのです。
第2回の復習:列名で考えると分かりやすくなる
前回は、
構造化参照を使うと、数式が読めるようになる
という話をしました。
- A1参照 → 位置で考える
- 構造化参照 → 意味で考える
という切り替えです。
今回紹介する 「名前の定義」 は、
この考え方を セル単位 にまで広げる機能です。
名前の定義とは何か?
名前の定義とは、
「セルや数値に、意味のある名前を付けること」
です。
たとえば、
消費税率が入力されているセルがあるとします。
- B2セルに「1.1」と入っている
- 数式では「B2」を参照している
この状態では、
・B2 が何を意味しているのか分からない
・別の人が見たら混乱する
・後から自分が見ても忘れている
という問題が起きます。
そこで、この B2 に
「消費税率」という名前を付けます。
するとExcelは、
「B2 = 消費税率」
という意味を理解するようになります。
数式が“文章”として読めるようになる
名前の定義を使うと、
数式の世界が大きく変わります。
例えば、
=E5*B2
という式は、
=売上*消費税率
という考え方に変わります。
これだけで、
・何を計算しているのか
・なぜこの数値を使っているのか
が、一瞬で分かるようになります。
これは、
Excelを「計算機」ではなく
**「説明できる道具」**として使うための重要なポイントです。
名前を使う最大のメリット
数値を“1か所”直すだけでいい
実務でよくあるのが、こんなケースです。
・消費税率が変わった
・手数料率が変わった
・割引率が変わった
セル番地で直接数値を書いていると、
・あちこち探して修正する
・修正漏れが発生する
・どこを直したか分からなくなる
という事故が起こります。
名前の定義を使っていれば、
「消費税率」という名前の中身を直すだけ
で、
それを使っているすべての数式が自動で反映されます。
名前の定義は「ルールを明文化する」こと
ここが、とても重要な考え方です。
名前の定義は、
単に便利な機能ではありません。
「このExcelでは、こういうルールで計算します」
という宣言です。
・この数値は固定値
・この値は基準値
・この日付は判定基準
こうした「業務ルール」を
Excelの中に残すことができます。
結果として、
・引き継ぎが楽になる
・説明しやすくなる
・属人化しにくくなる
という効果が生まれます。
テーブル × 構造化参照 × 名前の定義
ここまでで紹介してきた内容を整理しましょう。
- 第1回:テーブル → データの型
- 第2回:構造化参照 → 列名で考える
- 第3回:名前の定義 → セルに意味を持たせる
この3つを組み合わせると、
Excelは次のように変わります。
・セル番地をほとんど意識しなくなる
・数式が「説明文」に近づく
・後から見返しても理解できる
つまり、
Excelが“その場しのぎ”から“設計された資料”になる
ということです。
VBAやマクロの前に、やるべきこと
ここでも強調しておきます。
まだVBAやマクロは必要ありません。
- 関数を増やす必要もありません
- 新しい操作を大量に覚える必要もありません
やっていることは、
・セルに名前を付ける
・意味で考える
それだけです。
それだけで、
Excelの「分かりにくさ」は驚くほど減ります。
名前を付けると、Excelは“設計図”になる
名前の定義を使い始めると、
Excelの見方が変わります。
・このセルは何のためにあるのか
・この数値はどんな意味を持つのか
を意識するようになります。
結果として、
「計算結果だけ合っていればOK」なExcelから、
「説明できるExcel」へ
進化していきます。
これは、
資料作成や報告の場面でも
大きな武器になります。
次回予告
次回は、
検索・抽出作業を一気に楽にする
**「ワイルドカードを使った絞り込み」**を紹介します。
「手で探す」
「目で追う」
そんな作業から、Excelを解放しましょう。

