Excel表計算から一歩進む 実務活用ガイド
第2回 A1参照はもう卒業
― セル番地に悩まされない「構造化参照」で、数式が読める・壊れない ―
Excelで作られたファイルを開いて、
数式バーを見た瞬間にそっと閉じたくなった経験はありませんか。
=IF($E$2<>"",SUM($F$2:$F$100)/$G$2,0)
「これ、何を計算しているんだろう…」
「作った人しか分からないやつだ…」
Excelが苦手だと感じる原因の多くは、
**関数そのものではなく、“数式が読めないこと”**にあります。
そして、その読みにくさの正体が
**A1参照(セル番地参照)**です。
A1参照がつらくなる理由
A1参照とは、
A1、B2、E10 といった セルの住所を使って数式を書く方法です。
Excelを使い始めた頃は、これで問題ありません。
しかし、データが増え、業務が複雑になるにつれて、
次のような問題が必ず起こります。
・ E列って何の列だっけ?
・ F2:F100 は、なぜこの範囲?
・ 行を追加したら、式を直さなきゃいけない
・ 列を挿入したら、参照がズレた
つまりA1参照は、
「人にとって意味が分かりにくく、壊れやすい」
という弱点を持っています。
第1回の復習:テーブルが前提条件
ここで、第1回の内容を思い出してください。
前回は、
「表をテーブルにするだけでExcelが一段便利になる」
という話をしました。
今回のテーマである 構造化参照 は、
そのテーブルがあって初めて使える機能です。
つまり、
- 表 → セル番地で考えるExcel
- テーブル → 列名で考えるExcel
という世界観の切り替えが起こります。
構造化参照とは何か?
構造化参照を一言で言うと、
「セル番地ではなく、列名で数式を書く方法」
です。
例えば、売上表に次のような列があるとします。
- 日付
- 商品名
- 数量
- 単価
- 売上
A1参照では、売上合計を求めるために
次のような式を書くことが多いでしょう。
=SUM(E2:E100)
一方、テーブルを使った構造化参照では、
考え方がこう変わります。
「売上列の合計」
つまり、
“場所”ではなく“意味”で数式を書く
これが構造化参照です。
構造化参照の最大のメリット
数式が「読める」ようになる
構造化参照を使うと、数式の見た目が変わります。
セル番地参照では、
=E2*F2
となっていたものが、
「数量 × 単価」
という形で考えられるようになります。
結果として、
・ この式は何を計算しているのか
・ どのデータを使っているのか
が、数式を見ただけで分かるようになります。
これは、
自分が後から見返すときだけでなく、
他人に引き継ぐときにも非常に大きなメリットです。
行が増えても、列が増えても壊れない
A1参照では、
データが増えるたびにこんな作業が発生します。
・ 範囲を広げる
・ 数式をコピーする
・ 集計範囲を確認する
構造化参照では、
**「その列すべて」**という考え方になるため、
・ 行が増えても
・ データが追加されても
数式を直す必要がありません。
これは、「たまたま動いているExcel」から
「意図して作られたExcel」へ変わる瞬間でもあります。
集計関数との相性が抜群
構造化参照は、
SUM、COUNT、AVERAGE だけでなく、
- SUMIFS
- COUNTIFS
- AVERAGEIFS
といった条件付き集計関数と非常に相性が良いです。
例えば、
- 特定の商品だけ
- 特定の月だけ
- 特定の担当者だけ
といった集計も、
**「列名 × 条件」**という形で整理できます。
結果として、
・ 数式が長くならない
・ 何を集計しているのか分かりやすい
・ 条件を変えるのも簡単
という状態になります。
「数式が怖い」の正体は、ほぼA1参照
Excelが苦手だと感じている人に
「どこが一番つらいですか?」と聞くと、
多くの人がこう答えます。
「数式が分からなくて…」
ですが、よくよく話を聞くと、
- 関数そのものは理解できる
- 何を足しているか分からない
- なぜその範囲なのか分からない
というケースがほとんどです。
つまり問題は、
数式ではなく、参照方法なのです。
構造化参照を使うことで、
「Excelが難しい」
→「Excelの書き方が悪かっただけ」
と感じる人は、実際にとても多いです。
まだ関数を増やさなくていい理由
ここで強調しておきたいのは、
新しい関数を覚える必要はないという点です。
- SUM
- IF
- COUNT
すでに知っている関数で十分です。
変わるのは、
「どのセルを指定するか」ではなく
「どの意味の列を使うか」
という考え方だけです。
構造化参照は、次のステップへの橋渡し
構造化参照を使い始めると、
Excelの世界が次のように広がっていきます。
・ 名前の定義が分かりやすくなる
・ ピボットテーブルとの相性が良くなる
・ データモデルや分析に進みやすくなる
つまり構造化参照は、
Excelを“一段上の使い方”に進めるための橋渡しです。
次回予告
次回は、
セル番地すら使わずにExcelを組み立てられる
**「名前の定義」**について解説します。
- この数値は何を意味しているのか
- このセルは何のためにあるのか
を明確にすることで、
Excelは「計算表」から「設計図」に変わります。

