第6回(最終回) ボタン1つで完成する
実務で“回り続ける”モダンExcelの作り方
ここまで、6回にわたって
PowerQuery と PowerPivot を中心に、
「モダンExcel」の考え方と実践を見てきました。
第1回では全体像を掴み、
第2回・第3回でデータを集めて整え、
第4回で集計の仕組みを作り、
第5回で操作できる資料へと仕上げました。
最終回となる今回は、
「それをどうやって“実務で回し続けるか”
に焦点を当てます。
Excelは「作れた」だけでは意味がない
実務でよくある失敗パターンがあります。
- 時間をかけて良いExcelを作った
- その月はうまく使えた
- 数か月後、誰も触らなくなった
理由はシンプルです。
「更新が面倒」
「触るのが怖い」
「誰が責任を持つのかわからない」
どれだけ出来の良いExcelでも、
回らなければ意味がありません。
モダンExcelの最終ゴールは、
**“作ること”ではなく
“回り続けること”**です。
モダンExcelの完成形とは何か
このシリーズで目指してきた完成形を、
改めて整理してみましょう。
- 元データは外部ファイル
- PowerQueryで自動取込み・前処理
- PowerPivotで関係性と集計ルールを管理
- ピボット+スライサーで操作できる
- 更新は「ボタン1つ」
この状態になっていれば、
日常業務はこう変わります。
- 毎月の作業は「更新」だけ
- 集計ミスの心配がない
- 条件変更に即対応できる
つまり、
Excelが“作業”から“仕組み”に変わる
ということです。
実務で回すための3つの原則
ここからは、
実際に業務で使い続けるために
必ず意識してほしいポイントを3つ紹介します。
原則① 更新手順を極限まで単純にする
更新手順は、
説明しなくてもできるレベル
まで落とし込みます。
理想は、
- 元データを所定のフォルダに保存
- Excelを開く
- 「すべて更新」をクリック
これだけです。
もし、
- 手作業が残っている
- 更新の順番がある
- 毎回設定を変える必要がある
のであれば、
まだ改善の余地があります。
原則② 触っていい場所を明確にする
実務でExcelが壊れる原因の多くは、
「触ってはいけない場所を触ってしまう」ことです。
対策はシンプルです。
- 入力・操作用のシート
- 表示・確認用のシート
- 仕組み(Query・Pivot)の部分
これらを意識的に分けること。
特に、
PowerQuery や PowerPivot は
「基本的に触らなくていい場所」です。
原則③ 属人化しない“考え方”を残す
引き継ぎを考えたとき、
重要なのは操作手順よりも考え方です。
- なぜPowerQueryを使っているのか
- なぜこのマスタ構成なのか
- なぜ1枚のデータにしているのか
これらが分かれば、
多少形が変わっても対応できます。
逆に、
理由が分からないExcelは、
誰も手を出せません。
Excelに「やらせる仕事」「やらせない仕事」
このシリーズを通して、
一度ここを整理しておきましょう。
Excelにやらせる仕事
- 集計
- 並べ替え
- 可視化
- 条件切り替え
Excelにやらせない仕事
- 手作業の繰り返し
- 複雑な依存関係の管理
- 属人化した数式の維持
PowerQuery と PowerPivot は、
Excelを否定するための機能ではありません。
Excelを守るための機能です。
中小企業・一人経営にとっての本当の価値
人数が少ない組織ほど、
- 一人が多くの役割を担う
- 業務が止められない
- 属人化しやすい
という課題を抱えています。
モダンExcelは、
- IT投資を最小限に抑え
- 今あるExcelを活かし
- 自分の時間を生み出す
ための現実的な選択肢です。
「システムを入れるほどではない」
でも、
「今のやり方は限界」
そんな状況に、
ちょうど良くはまります。
6回を通して完成した「ひとつの作品」
このシリーズを最初から実践してきた方は、
すでに1つの成果物を手にしています。
それは、
- 自動で更新できる
- 誰でも操作できる
- 壊れにくい
実務で使えるExcelレポートです。
これは単なるExcelファイルではありません。
- 考え方
- 設計
- 役割分担
が詰まった、
再現可能な仕事の型です。
次の一歩へ
ここから先は、
この考え方を横展開するだけです。
- 別の業務
- 別の部署
- 別のデータ
同じ構造で考えれば、
Excelの世界は一気に広がります。
「Excelが得意な人」になる必要はありません。
**“仕組みで回す人”**になれば十分です。
おわりに
Excelは、
正しく使えば今でも最強の業務ツールです。
ただし、それは
「表計算ソフトとして使う」こととは
まったく違います。
この6回シリーズが、
あなたのExcelの使い方を
一段引き上げるきっかけになれば幸いです。

