第1回 Excelはもう「表計算ソフト」ではない
モダンExcelの全体像を体感する
多くの会社員にとって、Excelは最も身近な業務ツールです。
売上管理、実績集計、報告資料、会議用データ、プレゼン資料。
気づけば、業務のあらゆる場面にExcelが使われています。
一方で、こんな経験はないでしょうか。
・毎月、同じような資料を作っているのに、毎回コピペから始まる
・別の人が作ったExcelは、どこを触っていいのかわからない
・数式が壊れるのが怖くて、必要な修正ができない
・データが増えると、ファイルが重くなって動かない
こうした悩みは、「Excelが古いから」でも、「自分のスキルが低いから」でもありません。
原因はもっとシンプルで、Excelの使い方が昔のまま止まっていることにあります。
Excelは今も進化し続けている
Excelというソフトは、実はこの10年ほどで大きく進化しています。
見た目は大きく変わっていないため気づきにくいのですが、内部の仕組みや考え方は、以前のExcelとは別物と言ってもいいレベルです。
その象徴が、
- PowerQuery
- PowerPivot
と呼ばれる機能です。
これらを総称して、最近では「モダンExcel」と呼ばれることがあります。
ただし、この言葉を聞いたことがあっても、
「なんだか難しそう」
「ITが得意な人向けでは?」
と感じて、触らずにきた方も多いはずです。
安心してください。
このシリーズは、ITエンジニア向けでも、Excelマニア向けでもありません。
「Excelを表計算ソフトとしてしか使っていない人が、一歩先に進む」
そのための実践的な内容だけを扱います。
従来のExcel作業が抱えている“構造的な問題”
まず、これまで多くの現場で行われてきたExcel作業を整理してみましょう。
典型的な流れは、こうです。
- 別のExcelやCSVファイルを開く
- 必要な部分をコピーする
- 手作業で列を整える
- 関数をコピーして集計する
- グラフを作る
- 月が変わったら、また最初からやり直す
この方法は、一見すると「Excelらしい使い方」に見えます。
しかし、ここには大きな問題が潜んでいます。
それは、作業のほとんどが人の手に依存しているという点です。
人が介在する作業は、
- 時間がかかる
- ミスが起きる
- 属人化する
- 引き継げない
という特徴を持っています。
特に中小企業や少人数の組織では、「そのExcelを作れる人が一人しかいない」という状況が珍しくありません。
一人経営、あるいは管理業務を一人で担っている場合、この問題はさらに深刻になります。
モダンExcelの考え方は「役割分担」
モダンExcelが目指しているのは、
「Excelをもっと複雑に使うこと」ではありません。
むしろ逆で、Excelを“正しい役割”に専念させることです。
そのために登場するのが、PowerQueryとPowerPivotです。
ここでは、細かい操作方法にはまだ入りません。
まずは全体像だけを押さえてください。
PowerQueryの役割
データを集めて、整える
- Excelファイル
- CSVファイル
- Accessなどのデータベース
こうした外部データを取り込み、
不要な列を削除し、形式を整え、
「分析に使える形」に変換する。
これを、人の手ではなく仕組みとして行うのがPowerQueryです。
一度設定すれば、次回以降は
「更新」ボタンを押すだけで同じ処理が再現されます。
PowerPivotの役割
集計のルールを管理する
PowerPivotは、複数のデータを関連づけて、
集計や分析を行うための土台になります。
これにより、
- 月別
- 部署別
- 商品別
といった集計を、関数を大量に書かずに行えるようになります。
Excel本体の役割
見る・考える・伝える
そして、最終的に表やグラフとして表示し、
考え、判断し、伝える部分をExcelが担当します。
この3つの役割分担が、モダンExcelの基本思想です。
このシリーズで最終的に作るもの
この6回シリーズでは、単に機能を説明するだけではありません。
最終的には、
- 複数のデータを自動で取り込み
- 加工・集計が自動化され
- スライサーやタイムラインで操作できる
- ボタン一つで更新できる
「社内報告・プレゼン用のExcelレポート」
を完成させることを目指します。
途中の回から読み始めても理解できるようにはしますが、
最初から順番に読み、実際に手を動かしてもらうことで、
「考え方」そのものが身につく構成にしています。
難しい理論より、まず体感する
ここまで読んで、
「なるほど、でも自分にできるだろうか」
と感じている方もいるかもしれません。
大丈夫です。
このシリーズでは、
- 専門用語はできるだけ避ける
- 出てきた言葉は必ず噛み砕く
- 画面操作を前提に説明する
ことを徹底します。
重要なのは、完璧に理解することではありません。
一度でも「更新だけで終わる作業」を体験することです。
それができた瞬間、
「今まで自分は何をしていたんだろう」
と感じるはずです。
次回予告
第2回では、いよいよPowerQueryを使います。
- Excel
- CSV
といった、現場でよく使われるデータを実際に取り込み、
「集める作業」がどれだけ楽になるのかを体感してもらいます。
ここからが、本当のスタートです。


